所長挨拶

HNakamura-1
所長 中村 春木

地球上の生命機能は、ゲノム情報が物理的に発現した蛋白質によって担われており、多数の蛋白質間の相互作用によって複雑な生命活動が営まれています。蛋白質研究所は、蛋白質の基礎研究を通じて生命活動の原理を明らかにすることを使命として、1958年に大阪大学の理学部と医学部が母体となって創設されました。化学、物理学、生物学、医学の研究者が集まり、学際的な場で斬新なアイデアを競い合う素地が当初からありました。それ以来今日まで、蛋白質研究所では、蛋白質を対象とした分子レベルから細胞レベル、さらに高次の階層に渡る優れた研究がなされ、国内外にわたり常に蛋白質研究の先端を走ってまいりました。創設後55年余を経た今、4研究部門16研究室に加え、蛋白質解析に関する独創的な方法論の開発とその応用を行う附属蛋白質解析先端研究センター7研究室を擁する規模に成長しています。

創設以来、全国から多くの所外研究者が蛋白質研究所を訪れ、研究所の施設・装置や研究のノウハウを共用して研究を行うことができる全国共同利用研究所として、活動してまいりました。この共同利用制度は改革がなされ、2010年4月から蛋白質研究共同利用・共同研究拠点として、SPring-8 のシンクロトロン・ビームライン利用、超高磁場核磁気共鳴(NMR)装置群の利用、蛋白質構造データベースの構築と公開等、蛋白質研究のコミュニティーに一層貢献できる体制と仕組みを作り、さらに活発に活動を続けております。特にデータベース事業では、蛋白質立体構造データバンク(PDB)の世界4拠点の一つとして PDBj を運営し、アジア・オセアニア地区のデータ登録や種々のサービスを行うとともに、PDBj-BMRB として生体系 NMR データバンクを米国 BMRB と共同して運営しています。また、広く海外からも共同利用・共同研究を募って行える体制も作り、多くの新規な国際共同研究が進められています。

蛋白質研究所に籍を置く40数名の教員は、各々先端的な研究を進める一方、それらの研究に裏打ちされた授業や実習を大阪大学理学部と医学部および大学院理学研究科、医学系研究科、生命機能研究科において積極的に行っています。また、これらの学部と大学院を合わせて常時100名前後の学生が蛋白質研究所に配属されています。さらに、70名程度の博士研究者が様々な研究プロジェクトに関わって日夜研究に精を出しています。これらの学生や博士研究員は世界各地から集まってきており、所内では国際的な交流が日常的に行われています。

蛋白質科学は、ゲノム科学の進展に伴い、個々の蛋白質の構造と機能を研究するという従来型の学問から急激に変貌し、個々の蛋白質の詳細な構造と機能の情報に立脚しつつ、生命機能を発現する蛋白質集合体をシステムとして理解し、生命情報の流れを蛋白質相互作用として解明しようとしています。すなわち、蛋白質の構造解析は今やゴールではなく、その構造を出発点とし、蛋白質ネットワークに基づく様々なスケールによって生命科学研究がなされる「構造生命科学」とも呼ばれる学問が進展しています。蛋白質研究所では、その伝統に基づきつつ、新たなフェーズである構造生命科学の基礎研究にさらに邁進し、大阪大学の理念である「物事の本質を見極める」研究と教育を実践していきます。一方で、附属蛋白質解析先端研究センターの産学・国際連携研究室や産業利用支援プログラム、データベース構築等の活動を通じて、企業や他の外部組織と連携して社会へのアウトプットも積極的に行ってまいります。これらの成果は、蛋白質研究所のホームページ(http://www.protein.osaka-u.ac.jp/)を通じて発信していく所存です。