植物の葉緑体に蛋白質を運び入れる分子装置を同定 ―陸上植物の進化の謎 解明に一歩―

大阪大学蛋白質研究所生体反応統御研究室の中井正人准教授および菊地真吾研究員、Jocelyn Bedard 研究員らの研究グループは、植物葉緑体の内包膜から、分子量約100万の新奇な蛋白質膜透過装置を単離精製する事に成功し、その全構成因子を同定しました。さらに、光産業創成大学院大学の井出徹教授、平野美奈子講師との共同研究で、単離したこの複合体を脂質二重層に組み込むと、運ばれる葉緑体蛋白質と相互作用する膜チャネルとして機能する事を証明しました。

葉緑体は、太古の昔に、光合成をするバクテリアが宿主の細胞に取り込まれる事で誕生しましたが、宿主の細胞内で光合成が効率よく行なわれるためには、葉緑体へ蛋白質を運び入れる仕組みも確立される必要がありました。この役割を担っている分子装置を、植物の葉緑体において同定した今回の発見は、葉緑体の進化や陸上植物の進化に関して新たな知見を与える成果であると同時に、生物が長い進化の過程で生み出してきた数少ない蛋白質膜透過装置のひとつが、本研究により明らかにされたことになります。

この研究成果は、2013年2月1日発行の米国科学誌 Science に掲載され、同誌の電子版において公開されました(http://www.sciencemag.org/content/339/6119/571.abstract)

論文タイトル:Uncovering the Protein Translocon at the Chloroplast Inner Envelope Membrane

著者:Shingo Kikuchi1, Jocelyn Bedard1, Minako Hirano2, Yoshino Hirabayashi1, Maya Oishi1, Midori Imai1, Mai Takase1, Toru Ide2, Masato Nakai*1(*Corresponding author、1大阪大学蛋白研チーム、2光産業創成大学院大学チーム)

Science 1 February 2013, vol 339, issue 6119, pages 571-574.

詳細は大阪大学最新研究成果リリースのページをご覧下さい。

中井准教授ウェブサイト: http://www.protein.osaka-u.ac.jp/enzymology/nakaiJ.html

記事掲載新聞:読売新聞2013年2月3日朝刊等

図:今回見出された蛋白質膜透過装置に欠陥があるシロイヌナズナの変異植物体(写真左)。 葉緑体を発達させる事ができずアルビノ致死となる。右は野生型のシロイヌナズナ。