論文掲載:二重殻ウイルスの粒子形成機構を解明「ウイルスキャプシドができる様子を位相差クライオ電子顕微鏡で解析」

 大阪大学蛋白質研究所の中道優介特任研究員(現:産業技術総合研究所研究員)、宮崎直幸助教、堤研太氏(D3)、東浦彰史助教(現:広島大学医歯薬保健学研究科助教)らは、大阪大学蛋白質研究所・中川研究室、高木研究室、生理学研究所・脳機能計測・支援センター村田研究室との共同研究により、ウイルス粒子が構築される過程で生じる中間体の立体構造を決定し、ウイルス粒子が階層的に構築されることを世界で初めて明らかにしました。

 多くのウイルスは、その遺伝子が正二十面体構造をした蛋白質の殻で覆われています。その中でレオウイルス科ウイルスは、さらに異なるパターンの多層の殻(キャプシド)で覆われた特徴的な構造をしています。レオウイルス科ウイルスとしては、乳児下痢症を引き起こすロタウイルスがよく知られています。限られた種類の蛋白質が互いを認識しながら数100以上集まってキャプシドを形成しますが、どのように互いの分子を認識し、正しい構造を作るかについては、これまで実験的にわかっていませんでした。本共同研究では、レオウイルス科ウイルスの1つイネ萎縮ウイルス(Rice Dwarf Virus)略してRDVを用いて、パターンの異なる多層のキャプシドを形成する様子を遺伝子組み換え技術と位相差クライオ電子顕微鏡により明らかにしました。

 RDVは内殻をT=1、外殻をT=13と呼ばれる2層の異なるパターンの正二十面体キャプシドで覆われています。本研究では、外殻を形成する蛋白質に遺伝子組み換え技術を用いて緑色蛍光蛋白質(GFP)を結合し、これを用いてウイルス粒子を形成させました。その結果、GFPが立体的に邪魔をして不完全な外殻を持つRDV粒子を作ることができました。これを位相差クライオ電子顕微鏡で解析したところ、RDVの外殻は、内殻の特定の領域(3回軸上)にだけ結合することがわかりました。このことから、RDVの外殻蛋白質は、最初に内殻の3回軸上に結合し、これを元にパズルのピースを組み合わせるように順次挿入されて行くことがわかりました。 本研究により、多層の殻を持つレオウイルス粒子がどのように形成されて行くかを世界で初めて明らかにしたことで、レオウイルスが感染、増殖、伝播する生活環の全体像の理解がさらに深まっただけでなく、この結果を用いて効率的に粒子形成を阻害することで、レオウイルス感染症の予防法や治療薬の開発に応用できると期待されます。

論文情報:
An Assembly Intermediate Structure of Rice Dwarf Virus Reveals a Hierarchical Outer Capsid Shell Assembly Mechanism, Yusuke Nakamichi, Naoyuki Miyazaki, Kenta Tsutsumi, Akifumi Higashiura, Hirotaka Narita, Kazuyoshi Murata, Atsushi Nakagawa, Structure, 27(3), 439-448, 2019
doi: https://doi.org/10.1016/j.str.2018.10.029

論文は、下記サイトより、 2019年4月24日までの間ダウンロードできます

https://authors.elsevier.com/a/1YgIa3SNvbqscV