発表論文

Press Release: 酵素の立体構造、「SACLA」のX 線レーザーを用いて 常温、原子分解能構造解析に成功

【概要】
桝田哲哉 農学研究科助教、岩田想 医学研究科教授(理化学研究所グループディレクター)、菅原道泰 理化学研究所特別研究員、鈴木守 大阪大学蛋白質研究所准教授、登野健介高輝度光科学研究センターチームリーダーらの共同研究グループは、X 線自由電子レーザー(以下、XFEL:X-ray Free-Electron Laser)施設「SACLA」を用いた「連続フェムト秒結晶構造解析(以下、FX)」という手法を使い、酵素の一種である「プロテイナーゼK」の構造を原子分解能での解析に成功しました。SFX を用いて原子分解能で構造決定した初めての成果です。今回の研究では、SACLA の高エネルギービーム特性を活かし「プロテイナーゼK」の1.20 Åの原子分解能での解析に成功しました。原子分解能による解析では、各原子を独立して見分けることができ、原子間の距離を正確に見積もることができます。また、水素原子の一部を可視化、窒素と酸素の原子種を区別することも可能です。また、今回の成果の特徴は解析を原子分解能かつ常温で行ったことにあります。凍結結晶の解析結果とは異なった、常温特有の「タンパク質側鎖や水分子の動き」を確認できたのは大きな進歩です。また非凍結結晶との比較でも、放射線による損傷のない構造が得られ、これまで見出されていなかった部位での「水分子の存在」が確認できました。本手法を用いた常温特有の「タンパク質や水の動き」、「酵素反応機構」が明らかとなることで、医薬品や機能性素材の設計開発など、医療や工業への幅広い応用も期待されます。本成果は、2017 年3 月31 日に英国の科学雑誌Scientific Reports に掲載されます。

【波及効果、今後の予定】
高分解能結晶構造解析は放射線による試料の損傷を防ぐため、急速に結晶を凍結する手法やX 線の照射位置を順次変えるような手法を用いて行われています。しかしながら、凍結処理を行うことにより結晶が収縮したり、モザイシティ(結晶内の配向の度合いを示す概念的な指標)が低下したりする現象や、タンパク質の活性部位に凍結に用いる抗凍結剤などが封入され機能を阻害する弊害なども知られています。また凍結に伴いタンパク質分子表面の水分子の配置やタンパク質の側鎖構造が変化し、タンパク質内部にも影響を及ぼすなどの事例も指摘されています。そのため人為的な影響が少なく、生理的な温度下での精度の高い構造情報が、タンパク質-リガンド間の精緻な相互作用解析に有益な知見を与えます。
本成果で得られた技術や手法を用いて、常温特有のタンパク質や水分子の動き、酵素反応機構を明らかとすることで、医薬品や機能性素材の設計開発など、幅広い応用利用が期待されます。

 

詳しくは Press-Release_170331.pdf

 

<お問い合わせ先>
【研究内容に関すること】
桝田 哲哉(ますだ てつや)助教
京都大学大学院農学研究科
Email: t2masuda@kais.kyoto-u.ac.jp
Tel:0774-38-3741 携帯:090-4904-4139

菅原 道泰 (すがはら みちひろ)特別研究員
理化学研究所放射光科学総合研究センター
Email: msuga@spring8.or.jp
Tel: 0791-58-2871

鈴木 守 (すずき まもる)准教授
大阪大学蛋白質研究所附属蛋白質解析先端研究センター
Email: mamoru.suzuki@protein.osaka-u.ac.jp
Tel: 06-6879-8637

登野 健介 (との けんすけ)チームリーダー
高輝度光科学研究センター XFEL 利用研究推進室
先端光源利用研究グループ 実験技術開発チーム

Press Release: 難聴を引き起こす新たな酵素を同定 -内耳発生のメカニズムや難聴の病態解明に貢献-

【概要】
大阪大学蛋白質研究所の古川貴久教授、茶屋太郎助教、及び岡本志央、坂口博史准教授(京都府立医科大学 耳鼻咽喉科・頭頸部外科学教室)の研究チームは、繊毛内の蛋白質輸送を制御する酵素が内耳の発生に重要な役割を果たしており、聴覚機能に必須であることを示しました。この成果は内耳の発生における酵素の重要性を明らかにし、今後の難聴の病態解明に繋がるものです。

Press Release: ガン増殖を引き起こすタンパク質Sin1の構造を明らかに ~分裂酵母の研究が新たな抗ガン剤創薬への扉を開く

【概要】
奈良先端科学技術大学院大学(奈良先端大 学長:小笠原直毅)バイオサイエンス研究科の塩﨑一裕教授、建部恒助教、横浜国立大学大学院工学研究院の児嶋長次郎教授(大阪大学蛋白質研究所特任研究員)らの共同研究グループは、ヒト発ガンの主因の一つであるAKTというタンパク質に結合してその活性化を制御するタンパク質複合体の仕組みについて、その中のSin1と呼ばれるタンパク質が結合する部位の構造を世界で初めて明らかにしました。

Press Release: 細胞外マトリックスを用いてヒト多能性幹細胞から高効率に血管内皮細胞の誘導に成功

京都大学iPS細胞研究所(CiRA)の齋藤潤准教授グループと、大阪大学蛋白質研究所の関口清俊寄付研究部門教授グループらの共同研究チームは、細胞外マトリックスのひとつラミニン411(LM411)の組換えタンパク質断片(LM411-E8)を用いることにより、ヒト多能性幹細胞注3)から正常機能を有する血管内皮細胞を高効率に分化誘導する手法の開発に成功しました。

Press Release: ガンの浸潤や骨粗鬆症の原因となるタンパク質の働きを阻害するペプチドを創製 ~新薬設計時の新たな作用領域として期待~

蛋白研の高木淳一教授のグループは、東大・菅裕明教授のグループと共同で、臓器形成や免疫応答を司る中心的なタンパク質であり、ガンの浸潤にもかかわるSema4D(セマフォリン4D)の受容体、PlxnB1(プレキシンB1)へ強く結合する環状ペプチドPB1m6の取得に成功しました。そして、その PB1m6がPlxnB1の機能を阻害することを証明しました。

蛋白質研究所・金城玲准教授らによるPDBj活動に関する学術論文 “Protein Data Bank Japan (PDBj): updated user interfaces, resource description framework, analysis tools for large structures” がNucleic Acids Researchから刊行されました。

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Press Release: 光合成の効率を調整するタンパク質、カルレドキシンを発見-光合成生物の酸化ストレスを減らす影の立役者-

大阪大学蛋白質研究所の栗栖源嗣教授らの研究グループは、ドイツ・ミュンスター大学のマイケル・ヒップラー教授らとの共同研究により、光合成の効率を調整するタンパク質を新たに発見し、その構造解析と、構造に基づいた機能解析に成功しました。

Press Release: 結晶を損傷しない新しいタンパク質結晶の輸送媒体を発見! ~タンパク質の結晶構造解析で新薬創生に一歩近づく

理研、京大、高輝度光科学研究センター、阪大蛋白研の共同研究グループは、X線自由電子レーザー(XFEL)施設「SACLA[1]」のX線レーザーを用いた「連続フェムト秒結晶構造解析(SFX)[2]」(1フェムト秒は1,000兆分の1秒)において、タンパク質結晶輸送媒体としてヒアルロン酸[3]が利用できることを発見しました。