発表論文

Press Release:ヒトの健康に重要な染色体の末端領域の新機能を発見!”Shugoshin2″

《染色体末端領域の新たな機能の発見》 モデル生物である分裂酵母を用いて、生命維持に必須の役割を果たす「テロメア」と呼ばれる領域に隣接する「サブテロメア」領域に「シュゴシン(守護神)」と呼ばれる蛋白質が結合することによって、サブテロメアに存在する遺伝子群の発現が正常に維持されていることを発見しました。

“Most-downloaded Publication Award Q3 2015″を受賞!極低温ヘリウムガス循環による多次元高分解能固体NMRの高感度化

約30Kの極低温で、多次元高分解能固体NMRを約10倍高感度化する実験法を開発しました。従来は、高価な液体ヘリウムを気化させて実験を行っていたため、実用性が低く不安定であり、実験時間を要する多次元NMR法を極低温で行うことは困難でした。本研究では、ヘリウムを消費することなく、安定して極低温実験を行うプローブを開発し、蛋白質の多次元固体NMRに応用できることを実証しました。これは、DNP超偏極法とも組み合わせることで、NMR感度の10000倍の向上も可能になる画期的な発見です。本方法は、JEOL RESONANCE社と特許を取得しました。

塩基解像度での5-ヒドロキシメチル化部位の解析に、酸化反応を用いた新手法を開発しました。

生体内で、5メチルシトシン(5mC)は、ten-eleven translocation (TET)酵素により酸化され、5ヒドロキシメチルシトシン(5hmC) 、5-フォルミルシトシン(5fC)、さらには5-カルボキシシトシンになります。これらの酸化物は、DNAのメチル化を除去する過程に関与するといわれ、遺伝子発現制御にも関与すると考えられています。

SACLAでタンパク質の硫黄原子を利用した結晶構造の決定に成功 -創薬ターゲットとなる多様なタンパク質の未知な立体構造の解析が可能に-

X線自由電子レーザー(XFEL)施設「SACLA」のX線レーザーを用いた「連続フェムト秒結晶構造解析(SFX)」(1フェムト秒は1,000兆分の1秒)と呼ばれる手法により、タンパク質が持つ硫黄原子を利用した結晶構造の決定に成功しました。SACLAのX線レーザーを用いたSFXでは、これまで課題だった試料の放射線損傷が起こることなく、マイクロメートル(μm)サイズかそれ以下のタンパク質微小結晶でも立体構造が決定できます。

維持型メチル化酵素Dnmt1の複製フォーク標的化領域(RFTS)はゲノムのメチル化模様の維持に必要なだけでなく、ゲノムを異常なメチル化から守る機能も担っています。

ゲノムの複製に依存したDNAメチル化模様の維持は、DNAメチルトランスフェラーゼDnmt1がおこなっていますが、複製フォークへのリクルートにはDnmt1のN末端に位置するPCNA結合領域とそれに続く複製フォーク標的化領域(RFTS)が重要な役割を担っていることが報告されています。N末端から順次欠失させたDnmt1を胚性幹細胞に発現させ、両領域が維持メチル化に果たす役割を解析したところ、RFTSは維持メチル化に必要ですがPCNA結合領域は必要ないことが明らかになりました。

DNAメチル化酵素DNMT1を利用した、ヒドロキシメチルシトシンのゲノム一塩基レベルでの解析方法の開発

哺乳類のゲノムではCpG配列内のシトシンがしばしばメチル化(5mC)されています。5mCは遺伝子のサイレンシング、ゲノム刷込み、X染色体不活性化やゲノムの安定性に寄与しています。制御をはずれた異常なゲノムのメチル化は胚性致死や癌の原因となります。最近、DNAの脱メチル化が5mCの酸化により産出されるヒドロキシメチルシトシン(5hmC)を経てなされることが報告されました。そのため、ゲノム内の5hmCの一塩基レベルでの解析技術が重要となります。

クロマチン高次構造に依存したHP1γのヒストンメチル化修飾の認識 ー再構成ヌクレオソームを使って、ヒストン修飾の新たな認識機構を見い出せた!

哺乳類にて、ヘテロクロマチン 蛋白質1(HP1)は、3種知られており、それら全ては、試験管内で、ヒストンH3の9番目のリシン(K9)のトリメチル化を同程度に認識することが、N末端ペプチドを用いて、報告されています。一方、HP1のノックアウトマウスでは、3種各々異なる表現型を示すことが報告されています。つまり、生化学的解析結果と個体レベルの機能解析結果にギャップがありました。

化学合成ペプチドと組換えペプチドをつなぎ合わせる修飾ヒストン蛋白質の合成

ヒストンは真核細胞の核内でDNAを収納する足場となる100残基を超える蛋白質です。ヒストンH2A、H2B、H3、H4各2分子からなる8量体に147塩基対のDNAが巻きついてヌクレオソームが形成されます。これらのヒストンはN末側にフレキシブルなテール領域をもち、アセチル化、メチル化、リン酸化などの翻訳後修飾を受け、遺伝情報発現の制御に関与しています。多くの修飾部位がN末端側テール領域にあることから、化学合成修飾ペプチドをN末端側、組換えペプチドをC末端側合成ブロックとして、これらを縮合するライゲーション法を開発しました。

地球の自転周期、タンパク質が原子スケールで記憶

シアノバクテリアの時計タンパク質※1(KaiC)の立体構造と機能を解明し、わずか10ナノメートルという小さな生体分子に、地球の自転周期(約24時間)を生み出す構造がデザインされていることを突き止めました。本研究成果は、「生命がいつ、いかにして時を計る仕組みをその内に取り入れたのか」という学問的意義と謎に迫るものであり、同時に、生物時計の周期を決める構造基盤の解明を通じて、生体リズムの不調に由来する各種障害の治療などに貢献する可能性があります。

極性反転保護を利用したO-結合型糖鎖を持つヒトインターロイキン-2の化学合成

インターロイキン2(IL-2)は、細胞性免疫に関わるサイトカインの一種です。私達の研究室では、長年にわたりこの糖タンパク質の化学合成に取り組んできました。基本的には、IL-2の全配列をいくつかの短いペプチド鎖(セグメントといいます)に分割して合成した後、それらをつなげる方法を用いてきました。しかし、IL-2は水に可溶性の糖タンパク質であるにもかかわらず、セグメントに分割するとそのC末端部分は全く水に溶けません。この問題の解決が困難であり、これまでIL-2の全合成が妨げられてきました。