発表論文

SACLAでタンパク質の硫黄原子を利用した結晶構造の決定に成功 -創薬ターゲットとなる多様なタンパク質の未知な立体構造の解析が可能に-

X線自由電子レーザー(XFEL)施設「SACLA」のX線レーザーを用いた「連続フェムト秒結晶構造解析(SFX)」(1フェムト秒は1,000兆分の1秒)と呼ばれる手法により、タンパク質が持つ硫黄原子を利用した結晶構造の決定に成功しました。SACLAのX線レーザーを用いたSFXでは、これまで課題だった試料の放射線損傷が起こることなく、マイクロメートル(μm)サイズかそれ以下のタンパク質微小結晶でも立体構造が決定できます。

維持型メチル化酵素Dnmt1の複製フォーク標的化領域(RFTS)はゲノムのメチル化模様の維持に必要なだけでなく、ゲノムを異常なメチル化から守る機能も担っています。

ゲノムの複製に依存したDNAメチル化模様の維持は、DNAメチルトランスフェラーゼDnmt1がおこなっていますが、複製フォークへのリクルートにはDnmt1のN末端に位置するPCNA結合領域とそれに続く複製フォーク標的化領域(RFTS)が重要な役割を担っていることが報告されています。N末端から順次欠失させたDnmt1を胚性幹細胞に発現させ、両領域が維持メチル化に果たす役割を解析したところ、RFTSは維持メチル化に必要ですがPCNA結合領域は必要ないことが明らかになりました。

DNAメチル化酵素DNMT1を利用した、ヒドロキシメチルシトシンのゲノム一塩基レベルでの解析方法の開発

哺乳類のゲノムではCpG配列内のシトシンがしばしばメチル化(5mC)されています。5mCは遺伝子のサイレンシング、ゲノム刷込み、X染色体不活性化やゲノムの安定性に寄与しています。制御をはずれた異常なゲノムのメチル化は胚性致死や癌の原因となります。最近、DNAの脱メチル化が5mCの酸化により産出されるヒドロキシメチルシトシン(5hmC)を経てなされることが報告されました。そのため、ゲノム内の5hmCの一塩基レベルでの解析技術が重要となります。

クロマチン高次構造に依存したHP1γのヒストンメチル化修飾の認識 ー再構成ヌクレオソームを使って、ヒストン修飾の新たな認識機構を見い出せた!

哺乳類にて、ヘテロクロマチン 蛋白質1(HP1)は、3種知られており、それら全ては、試験管内で、ヒストンH3の9番目のリシン(K9)のトリメチル化を同程度に認識することが、N末端ペプチドを用いて、報告されています。一方、HP1のノックアウトマウスでは、3種各々異なる表現型を示すことが報告されています。つまり、生化学的解析結果と個体レベルの機能解析結果にギャップがありました。

化学合成ペプチドと組換えペプチドをつなぎ合わせる修飾ヒストン蛋白質の合成

ヒストンは真核細胞の核内でDNAを収納する足場となる100残基を超える蛋白質です。ヒストンH2A、H2B、H3、H4各2分子からなる8量体に147塩基対のDNAが巻きついてヌクレオソームが形成されます。これらのヒストンはN末側にフレキシブルなテール領域をもち、アセチル化、メチル化、リン酸化などの翻訳後修飾を受け、遺伝情報発現の制御に関与しています。多くの修飾部位がN末端側テール領域にあることから、化学合成修飾ペプチドをN末端側、組換えペプチドをC末端側合成ブロックとして、これらを縮合するライゲーション法を開発しました。

地球の自転周期、タンパク質が原子スケールで記憶

シアノバクテリアの時計タンパク質※1(KaiC)の立体構造と機能を解明し、わずか10ナノメートルという小さな生体分子に、地球の自転周期(約24時間)を生み出す構造がデザインされていることを突き止めました。本研究成果は、「生命がいつ、いかにして時を計る仕組みをその内に取り入れたのか」という学問的意義と謎に迫るものであり、同時に、生物時計の周期を決める構造基盤の解明を通じて、生体リズムの不調に由来する各種障害の治療などに貢献する可能性があります。

極性反転保護を利用したO-結合型糖鎖を持つヒトインターロイキン-2の化学合成

インターロイキン2(IL-2)は、細胞性免疫に関わるサイトカインの一種です。私達の研究室では、長年にわたりこの糖タンパク質の化学合成に取り組んできました。基本的には、IL-2の全配列をいくつかの短いペプチド鎖(セグメントといいます)に分割して合成した後、それらをつなげる方法を用いてきました。しかし、IL-2は水に可溶性の糖タンパク質であるにもかかわらず、セグメントに分割するとそのC末端部分は全く水に溶けません。この問題の解決が困難であり、これまでIL-2の全合成が妨げられてきました。

Press Release: 再生医療用 iPS 細胞の培養に最適な足場材の製造方法を確立

大阪大学蛋白質研究所と(株)ニッピは、再生医療用 iPS 細胞の培養に適したラミニン511E8フラグメントの製造方法を確立しました。本成果を踏まえ、(株)ニッピは、生物由来原料基準に適合した製品(商品名:iMatrix-511MG)を2015年6月頃から発売予定です。本技術は、移植医療用 iPS 細胞の製造など、iPS 細胞を利用した再生医療の研究開発を加速することが期待されます。

Press Release: 老化に伴う動体視力低下のメカニズムを解明しました

大阪大学蛋白質研究所分子発生学研究室の古川貴久教授と佐貫理佳子助教らの研究グループは、網膜視細胞のシナプスが正常な位置に形成されるしくみを明らかにし、動体視力に必須であることを示しました。この成果は神経回路において神経細胞のシナプスが一定の位置に形成される意義を明らかにし、また高齢ドライバーの運転能力低下への関与が考えられている老化に伴う視覚能力の低下のメカニズムの解明につながるものです。