発表論文

化学合成ペプチドと組換えペプチドをつなぎ合わせる修飾ヒストン蛋白質の合成

ヒストンは真核細胞の核内でDNAを収納する足場となる100残基を超える蛋白質です。ヒストンH2A、H2B、H3、H4各2分子からなる8量体に147塩基対のDNAが巻きついてヌクレオソームが形成されます。これらのヒストンはN末側にフレキシブルなテール領域をもち、アセチル化、メチル化、リン酸化などの翻訳後修飾を受け、遺伝情報発現の制御に関与しています。多くの修飾部位がN末端側テール領域にあることから、化学合成修飾ペプチドをN末端側、組換えペプチドをC末端側合成ブロックとして、これらを縮合するライゲーション法を開発しました。

地球の自転周期、タンパク質が原子スケールで記憶

シアノバクテリアの時計タンパク質※1(KaiC)の立体構造と機能を解明し、わずか10ナノメートルという小さな生体分子に、地球の自転周期(約24時間)を生み出す構造がデザインされていることを突き止めました。本研究成果は、「生命がいつ、いかにして時を計る仕組みをその内に取り入れたのか」という学問的意義と謎に迫るものであり、同時に、生物時計の周期を決める構造基盤の解明を通じて、生体リズムの不調に由来する各種障害の治療などに貢献する可能性があります。

極性反転保護を利用したO-結合型糖鎖を持つヒトインターロイキン-2の化学合成

インターロイキン2(IL-2)は、細胞性免疫に関わるサイトカインの一種です。私達の研究室では、長年にわたりこの糖タンパク質の化学合成に取り組んできました。基本的には、IL-2の全配列をいくつかの短いペプチド鎖(セグメントといいます)に分割して合成した後、それらをつなげる方法を用いてきました。しかし、IL-2は水に可溶性の糖タンパク質であるにもかかわらず、セグメントに分割するとそのC末端部分は全く水に溶けません。この問題の解決が困難であり、これまでIL-2の全合成が妨げられてきました。

Press Release: 再生医療用 iPS 細胞の培養に最適な足場材の製造方法を確立

大阪大学蛋白質研究所と(株)ニッピは、再生医療用 iPS 細胞の培養に適したラミニン511E8フラグメントの製造方法を確立しました。本成果を踏まえ、(株)ニッピは、生物由来原料基準に適合した製品(商品名:iMatrix-511MG)を2015年6月頃から発売予定です。本技術は、移植医療用 iPS 細胞の製造など、iPS 細胞を利用した再生医療の研究開発を加速することが期待されます。

Press Release: 老化に伴う動体視力低下のメカニズムを解明しました

大阪大学蛋白質研究所分子発生学研究室の古川貴久教授と佐貫理佳子助教らの研究グループは、網膜視細胞のシナプスが正常な位置に形成されるしくみを明らかにし、動体視力に必須であることを示しました。この成果は神経回路において神経細胞のシナプスが一定の位置に形成される意義を明らかにし、また高齢ドライバーの運転能力低下への関与が考えられている老化に伴う視覚能力の低下のメカニズムの解明につながるものです。

Press Release: アルツハイマー病の原因物質を「掃除」するタンパク質の立体構造を解明

本学蛋白質研究所高木淳一教授のグループは、アルツハイマー病の原因物質を「掃除」するタンパク質の立体構造を解明しました。

アルツハイマー病などの神経変性疾患の多くは、脳内で生じる「アミロイド」と呼ばれる繊維状凝集体が神経細胞を死滅させ、脳の機能にダメージを与えることでおこると考えられています。この凝集体の蓄積は長い年月をかけて起こるため、いったん生じるとそれを除去することは難しく、最初からこの凝集体が蓄積しないようにする治療法が必要と考えられています。

Press Release: 連続フェムト秒結晶構造解析のための結晶供給手法を開発 -少量の試料で多様なタンパク質の結晶構造決定がSACLAで可能に-

理化学研究所、大阪大学、京都大学、高輝度光科学研究センター(JASRI)は、X 線自由電子レーザー(XFEL)施設 “SACLA” の X 線レーザーを用いた「連続フェムト秒結晶構造解析(SFX)」のための汎用的タンパク質結晶供給手法の開発に成功しました。この解析が実現すれば、これまで課題だった試料の放射線損傷が起こることなく、ナノメートル~マイクロメートル(nm~μm)サイズのタンパク質の微小結晶でも結晶構造を決定できます。さらに、SFX では酵素反応に伴う一連の構造変化が起きるフェムト秒~ピコ秒(1ピコ秒は1兆分の1秒)間の反応過程などを観察できます。しかし、タンパク質結晶を連続的に X 線レーザーの照射ポイントに供給するには液状の試料を速い流速で噴射するため、結果として大量の試料が必要であること、また、試料の組成によっては実験中に塩結晶が析出するため、タンパク質結晶の安定供給ができないという問題がありました。

Press Release: DNA 修復機構はいつでも守る側ではなく、破壊する側に廻ることも~新たな発がんメカニズムの理解と抗がん剤の効果を高める可能性

大阪大学蛋白質研究所の寺澤匡博特任研究員、篠原美紀准教授の研究グループは、ヒト細胞を用いて、細胞内機能(DNA 修復機構)が分裂期に限ってはたらいてしまうと遺伝情報の源であるゲノム DNA を破壊してしまうことを発見しました。

Press Release: パーキンソン病の治癒に繋がるか?原因物質アミロイド繊維の基本的性質を解明

本学蛋白質研究所後藤祐児教授のグループは、ハンガリーのエトヴァッシュ・ローランド大学、鳥取大学と共同で、パーキンソン病の原因となるアミロイド線維が、低温で完全に分解することを発見しました。アミロイド線維の変性に関する基本的性質が明らかになったことによって、パーキンソン病の予防や治療の発展につながることが期待されます。