発表論文

電気信号により制御される水素イオンチャネルの形を原子レベルで解明 -創薬研究から分子デバイスへの応用まで、大きな波及効果に期待-

大阪大学の竹下浩平招へい研究員(蛋白質研究所)、岡村康司教授(大学院医学系研究科)、中川敦史教授(蛋白質研究所)の研究チームは、電気信号(膜電位) を利用して我々の体が病原菌を退治する際に水素イオン(プロトン)の流れを制御する電位センサー型プロトンチャネルのかたちを原子レベルで解明し、必要な時だけうまくプロトンを通す仕組みを明らかにしました。これによりプロトンの出入り口に蓋をするような化合物設計も可能となり、様々な病気に対する新規医薬品開発などに繋がることも期待されます。神経伝達や心臓の拍動に電気信号が使われていることは従来から広く知られていますが、今回明らかになった構造は、生体内での電気信号がどのように制御されているかについて、原子レベルでの詳細な情報を与える重要な成果です。この研究成果は、プロトンと生体防御ならびに様々な疾患の原因を考える上でも重要な発見であり、米国 Nature Structure & Molecular Biology 誌に掲載されました。

アルツハイマー病から脳を守る細胞内の「掃除屋」タンパク質を発見しました

蛋白質研究所高木淳一教授のグループは、ドイツのマックスデルブリュック分子医学研究所と共同で、sorLA(ソーラ)という脳内の膜タンパク質が、アルツハイマー病などの神経変性疾患発症の原因と考えられている Aβ ペプチド(アミロイドを形成するものの一種)の蓄積を防ぎ、アルツハイマー病に罹るリスクを軽減する役割を持つことを明らかにしました。この成果は我々の脳に神経変性疾患に対する自衛策がもともと備わっていることを示しただけでなく、アルツハイマー病の治療と予防のための新しい「作用点」を発見したものとして注目されます。

細胞移植に適した新しいヒト iPS 細胞の樹立・維持培養法の開発

大阪大学蛋白質研究所の研究チームは、京都大学 iPS 細胞研究所の中川誠人講師らと協力して、細胞移植治療に適した安全かつ高効率のヒト iPS 細胞の樹立・維持培養法を確立しました。この研究成果は、英科学雑誌「Scientific Reports」のオンライン版に1月8日づけで掲載されました。

どんな蛋白質でも可溶性発現させる融合タグを開発 ―アミロイド前駆体由来の”超酸性領域”が蛋白質の挙動を改善―

大阪大学蛋白質研究所および東京都臨床医学総合研究所の共同研究チームは、大腸菌をホストとした組み換え蛋白質の発現と精製を簡便にする新規な融合発現システム “FATT タグ” を開発しました。なお、本研究の成果は、米国雑誌「Protein Science」のオンライン版に4月29日付けで掲載されました。

植物の葉緑体に蛋白質を運び入れる分子装置を同定 ―陸上植物の進化の謎 解明に一歩―

大阪大学蛋白質研究所生体反応統御研究室の中井正人准教授および菊地真吾研究員、Jocelyn Bedard 研究員らの研究グループは、植物葉緑体の内包膜から、分子量約100万の新奇な蛋白質膜透過装置を単離精製する事に成功し、その全構成因子を同定しました。さらに、光産業創成大学院大学の井出徹教授、平野美奈子講師との共同研究で、単離したこの複合体を脂質二重層に組み込むと、運ばれる葉緑体蛋白質と相互作用する膜チャネルとして機能する事を証明しました。

ヒト多能性幹細胞(ES/iPS 細胞)培養用フィーダーフリー培養基材

大阪大学蛋白質研究所の研究チームは、ヒト多能性幹細胞(ES/iPS 細胞)をフィーダー細胞を使わずに培養できる新たな培養基材を開発し、これを用いて ヒト多能性幹細胞を安全かつ高効率に培養できることを京都大学物質–細胞統合システム拠点チームとの共同研究により明らかにしました。この成果は12月4日付けで Nature Communications 誌に発表されました。