大阪大学 蛋白質研究所 蛋白質高次機能学研究部門 分子発生学研究室


古川ラボ-メッセージすべての人間は2種類に分けられる、ロマンを解する人間と解さない人間と。
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古川部長からのメッセージ

なぜ研究するのか

べての人間は2種類に分けられる、ロマンを解する人間と解さない人間と。
「なぜ科学研究をするのですか?」 「2つの大きなロマンがあるから。」 この世に生を受けて死ぬまで、人の人生は長いようで短いとよく言われます。振り返ってみると一瞬であったようにすら感じるといいます。そう考えると、人の人生というものは「瞬く間に落ちていく流れ星」のようなものではないでしょうか。実際、考えてみると人が元気で生産的に働ける時間というのは長くないと思います。10代は勉強、20代は働いていてもまだまだ修行中と言えるでしょう。分野によるでしょうが、30代から50代までが気力・体力・仕事力そろって一番充実して働ける頃でしょうか。そうすると、人が何かを成し遂げるのに与えられた時間というものはかなり短いものです。その短い人生で自分の人生の価値を何に見いだすでしょうか? たとえば、仕事での成功、作り上げた財産、家族、とても素敵な人を愛したこと、どれも意義あることだと思います。でも、できれば世界全体の進歩にも貢献したいと思いませんか?人類の知的進歩に貢献し、自分の足跡を小さくとも残すという点では、研究者という人生はとても魅力的です。
あなたがこの世に生まれてきたことで、あなたがこの世で成し遂げたことで、たとえほんの少しであったとしても人類共通の知的財産が増えたのです。
今まで誰もわからなかったことが、あなたの執念と苦労の結果、わかるようになったのです。
魅力的だと思いませんか?

どうせ流れ星のような人生だから、流れている間は少しでも明るく輝いてみたい。そう思いませんか?

科学研究は、謎と不思議に溢れる自然を解明していくというロマン、そして自分の人生は人類の進歩に貢献することで輝いたというロマン、そういったロマンに満ちたものなのです。 一緒に研究してみようという人を待っています。




研究者の人生について(現実的考察)

究者として生きていく上で、一番の利点は自分の生活を自分でコントロールできることではないでしょうか。ずっと以前から、研究者はフレックスタイムの勤務形態でした。多くの若い研究者は深夜型の生活の人も多いと思います。さらに、病院勤めの医者のように深夜や休日に突然呼び出されることもありません。自分のペースで生活できます。長期的に見ても、いつどこへ留学したいかなどを原則として自分の希望で決められます。 私は高校生の頃、数学者の藤原正彦氏の「若き数学者のアメリカ」(新潮文庫)を読んで、自分も将来は是非留学して活躍してみたいと思ったのが記憶に残っています。また、当時から私はロックグループの「Boston」の大ファンで、リーダーのTon SchulzがMIT出身と聞いて、留学するならボストンに行ってみたいとあこがれていました。それから10年以上経って、不思議と実際にボストンに留学することになりました。会社からある日海外勤務の辞令が降りるパターンなら、こうはいかなかったと思います。また、日本にいて海外の学会にもしばしば参加することができます。 なかなか楽しい人生だと思いませんか? 研究者の生活は暗いものではありません。自分のペースで生活し、国内も海外の学会にも行き、自分の追求したいことを研究できるという趣味と実益をかねた充実したものです。是非、研究者の仲間入りをしましょう。




私の研究の流れ

は医学部に入って当初は臨床医になろうと思っていました。学部に上がって、研究というものにも興味があったので研究室に出入りするようになったのをきっかけとして、卒業の時には本格的に研究を志しました。未知の謎を解明していく研究の面白さに加え、研究を通じて、できれば人類全体に対する大きな仕事をしたいと思ったからです。大学院は京大医学部医化学教室(本庶佑教授)でトレーニングを受け、研究の技術や進め方など多くを学ばせてもらいました。私は大学院入学当初から、「我々の中枢神経系の発生がどのようにDNAの塩基配列の情報としてプログラムされているのか」ということに興味がありました。大学院時代はNotchの解析を分子そのものに注目して行いました。留学にあたって、中枢神経系の発生の謎にアプローチするのに、今度は何らかのシステムに注目して研究を進めたいと思い、網膜を選びました。ハーバード大学医学部のCepko(セプコ)研(Connie Cepko教授)に参加することを許され、そこで網膜の研究を開始しました。私は特にDNAのプログラムを直接制御する転写因子に注目して研究しようと思い、幸い網膜の発生に重要な働きをする新規の転写因子をいくつかクローニングすることができ、それらの機能解析も進めました。テキサス大学で独立し、研究室を立ち上げました。そこでは、網膜でのコンディショナルノックアウトの系を開発し、それまでのマウスやチックに加え、発生の早い時期の解析には強力なアフリカツメガエルを用いた実験系も導入しました。中枢神経系のプログラムを解明していくには、どうしても生体レベルでの遺伝子発現制御メカニズムの解析が欠かせないとの考えから、大阪バイオサイエンス研究所に移ってからトランスジェニックマウスの系を導入しました。ゲノムプロジェクトによって、ヒトやマウスのほとんどの遺伝子の構造はわかったものの、その発現制御メカニズムはいまだに謎だらけの状態です。以前、遺伝子発現制御がかなり注目された時代がありましたが、皆が思ったより難しい問題であることがわかりました。しかし、私はやはり遺伝子発現制御の問題を避けては、中枢神経系の発生のプログラムの謎を解明できないと思っています。そこで、網膜の視細胞のような特異性の高い、ある意味シンプルな系に注目して解析を進めていけば、解明していけるのではないかと考えています。




臨床医学や再生医療への貢献

は医学部出身の研究者ですので、研究の目的を純粋な科学研究の面だけでなく、病気で苦しんでおられる患者さんへの治療や診断への応用の両面で考えています。自分の研究が患者さんへの治療に役立てばというのは、医学研究者の共通した願いだと思います。発生の分野では再生医療が注目されています。しかし、再生医療の実際の医療現場への応用にはまだまだ超えるハードルがいくつもあり、その困難さも言われています。19世紀末に当時の米国の特許庁長官は「発明可能なものは、今やすべて発明尽くされてしまった」と言ったそうです。それから考えるに、人類の進歩は我々自身が予測するよりずっとダイナミックではないでしょうか。再生医療が現時点で大きな困難を抱えていても、私は人類の進歩に楽観的です。ただ、その進歩に近道はないと思います。どんなに面倒でも着実な研究の積み上げだけが、結局我々にブレークスルーをもたらすのではないでしょうか。私はじっくりと基礎研究の成果を積み上げていくことが、ひいては患者さんへの貢献の一番の近道だと信じて研究しています。


古川部長からのメッセージ

日本生化学会 近畿支部例会開催のご挨拶


のたび、2017年5月27日(土)に大阪大学豊中キャンパスにおいて、第64回日本生化学会近畿支部例会を開催させていただくことになりました。本例会は大阪大学蛋白質研究所から支援を受けた共催になります。

 本例会のテーマとして、「たんぱく質を究める」を掲げました。たんぱく質は生命現象の中心を担う分子の一つであり、生化学研究における重要性は言うまでもありません。生化学の一分野であった分子生物学が20世紀後半に大きく発展して、生命科学に大きな変化をもたらしました。ヒトゲノム解読がその始まりを告げたとも言える21世紀に入って、次世代シークエンス技術、iPS細胞技術、ゲノム編集技術という超弩級の技術革新の波が次々と生命科学に押し寄せてきました。さらに、癌医学の分野でも免疫療法によるがん治療という大きなパラダイムシフトが起きています。私が医化学教室という生化学の伝統を汲む研究室の大学院生として研究を開始した1980年代末には、まったく想像もつかなかった技術革新の数々です。このような分子生物学やゲノムバイオロジーを中心とした生命科学の著しい発展の中で、以前は生命科学の中心的な学問分野であった生化学は難しい立ち位置を強いられていると言っても過言ではないでしょう。  

 現代における生化学は、従来の「生物の構成物質および化学反応を解明して、生命現象のブラックボックスを解明する学問」という重要な側面を保持しつつ、ゲノムバイオロジーやiPS細胞技術などによる組織や生体の作出や改変といった革新的技術を実現するためのパートナーとしての学問分野という位置づけも必要になってくると考えられます。 しかし、上記の技術革新の影響が一段落し、学問、医療、産業としてさらなる発展が望まれる段階では、たんぱく質、糖、脂質をはじめとする生体における実際の構成分子や酵素などの生体反応を直接の研究対象とする生化学こそが、極めて大きな役割を果たすのではないでしょうか。 本例会では、皆さんが生化学という分野のこれからの方向性について考える良い機会となれば幸いです。


 本例会では、日本の生化学を牽引する3人の先生と蛋白質研究所の研究者達によるたんぱく質を究める特別講演ならびにシンポジウムを予定しております。また例会前日の5月26日(金)には、千里中央の千里ライフサイエンスセンターにおいてテクニカルセミナーを開催いたします。これらの中で若い研究者達が色々と学んでいただくとともに、例会の特徴でありますアットホームな雰囲気の中での情報交換や議論を活発に行っていただくことを強く願っております。

 関係者一同、近畿地区の研究者の皆さまのご参加を心よりお待ちしております。

第64回日本生化学会近畿支部例会

例会長  古川 貴久

(大阪大学 蛋白質研究所 教授)

基礎研究は日本の経済発展の生命線だ


の夏に人生で初めてウィーンを訪れる機会があった。日本人がイメージする伝統的なヨーロッパの街のお手本ともいえる歴史と上品さを感じさせる建物が美しく並ぶ。これまでウィーンに来る機会がなかったことをひどく残念に思った。特に美術史博物館は素晴らしく、ハプスブルグ家が何世紀にも渡って収集した古代エジプト、ギリシャの出土品から近代までの彫刻、調度品、絵画などのコレクションは人類の文明、文化を凝集したような密度を誇り、収集品のセンスの良さが際立っている。

 さて、日本への帰路の乗り継ぎで寄ったフランクフルト空港での出国管理ゲートでは、EU居住者とその他の非居住者で列が分けられている。EUの方のゲートはほぼ待ち時間がないのに対して、非居住者なら長い行列に並ぶことになる。その長い行列にならんでいると、空港係員が列に回ってきてパスポートをチェックしてくる。私のパスポートを見て、「ヤーパンか、ヤーパンならこっちだ」とEU居住者のゲートに連れいってくれて、すぐに通ることができた。日本という国に対する国際的な信用の高さを改めて感じた出来事だった。いうまでもなく我々の先達の努力によって戦後の日本が経済的にも繁栄し、世界の平和や他の国の発展にも貢献してきたことを反映した結果だろうと、先輩方への感謝の念に堪えない。「衣食足りて礼節を知る」の言葉通り、個人でも国でもある程度の経済的な繁栄や安定なくしては、国際的な貢献や信用獲得も難しいであろう。

 そういった意味において、不景気が長い日本では経済再生最優先という方針もうなずける。しかしながら、大学や公的研究機関における研究環境は年々厳しくなりつつある。短期間で産業につながりそうな応用研究や橋渡し研究は盛んに奨励されているが、基礎研究は放置されている感がある。大学への交付金は年々減ることから、運営費も減り、研究費を獲得しようにも以前より応募できる基礎研究の研究費の種類が減っている上に、幸運にも同額の研究費があったとしても消費税のアップと電気代や物価の上昇で実際の研究費は相当の目減りを余儀なくされてきた。

  公的研究費は税金が原資であることから、国の財政状況が厳しい現在において、基礎研究のサポートは難しい面はあるであろう。しかし、経済最優先というなら何か誤解されていないであろうか。応用研究はある意味放っておいても企業が鵜の目鷹の目で産業化の方向に持っていくであろう。大学における研究で最も大事な使命は基礎研究である。そして実は基礎研究こそが経済発展につながる一番の「儲け」になるのである。そこを世間では勘違いされているようである。基礎研究は、真理や知識や好奇心といった観点から重要だと語られることが多いが、経済的にも非常に重要なのである。少なくとも生命科学においては、産業化につながる画期的な応用は基礎研究から出ている。最近の具体例でいうと、皆が知っているiPS細胞、がん治療の切り札とも言われるPD-1抗体、関節リウマチ治療薬のIL-6受容体抗体などはどれも「純然たる基礎研究」から出てきたものである。応用研究から出てきたものではない。そして、これらは日本発の世界に冠たる成果として日本に大きなアドバンテージと経済効果をもたらしつつある。人真似でない画期的な産業製品につながるものは基礎研究から出るのである。しかし、前もってどの基礎研究が応用や産業につながるかは誰にも分からない。だからこそ、公的に広くサポートすることが重要なのである。日本国が経済的な成長や繁栄を目指すなら、国が基礎研究に着実に投資することが、大きな経済効果をもたらす新成長分野や画期的新製品を生み出す最も期待値の高い方法である。基礎研究は科学技術立国日本の経済発展の生命線なのである。
(2015年9月8日)


パラダイス鎖国と情報の洪水

書  名:学術月報
掲載年:2007年5月 (Vol. 60 No. 5)
発行者:独立行政法人 日本学術振興会


のたび、日本学術振興会賞を頂くことができ感謝の気持ちで一杯です。これまでの研究を支えてくださった共同研究者の方、指導して下さった先生方、ならびに関係者の皆様に深く感謝いたします。今後、生命科学・医学の発展にさらに貢献できるようにいっそう精進したいと思います。

  私は現在までに4つの場所で研究を行ってきました。京都大学医学部大学院、ハーバード大学医学部遺伝学部門、テキサス大学UTSWメディカルセンター、大阪バイオサイエンス研究所です。今回私が受賞した網膜の研究は、ハーバード大学のポスドクの時から網膜についての研究を開始して発展してきたものでありますので、日米の研究環境について思うことを、研究情報の観点から少し述べてみたいと思います。

  阪神大震災の約10日前にボストンへ飛び立ち、雪の中、立派な建物に圧倒されつつ、右も左もわからない不安の中赴任しました。網膜を研究しているラボで、一年目はボスの望むプロジェクトで研究していたものの、まったくうまくいかず、さりとて今後結果が出そうだという展望もないまま一年が過ぎていきました。そこでやはり自分は何をしたいのかと考え直して、大学院時代に分子生物学のトレーニングを受けたという自分のバックグラウンドも考え合わせ、分子レベルでの網膜の発生の解明にとりかかろうと思い立ちました。それによって、新しい原理や概念もつかめるかもしれないと考えたのです。一種捨て身で始めたプロジェクトは幸運に恵まれ、紆余曲折を経つつも目に見える形で成果となって、やがてテキサス大学で自分の研究室を主宰することとなりました。

  米国内で研究施設を移って感じたのは、テキサス大学UTSWメディカルセンターにはノーベル賞学者が3人もおり、もちろんレベルは非常に高いのですが、生命科学分野ではやはりハーバード大学・MITがあるボストン地区の研究密度と情報密度の高さには特別なものがあるということです。実際、アメリカ人研究者達からも、ボストンは一種特別な地域として捉えられていると聞きました。いわゆるスター研究者が多数きらめいていて、若い有望な研究者も星のごとくいます。毎日、世界から一流の研究者がセミナーに訪れ、一日二回セミナーに出席ということも多かったと記憶しています。セミナーでは論文に発表される前の最新の結果も多く聞くことができ、日に日に賢くなっていくような気分になりました。実際、少なくとも日々知識は増えていたと思いますし、世界の最先端の情報に常に触れているという感覚はありました。研究室の雰囲気も良く、自分の研究だけに専念できるポスドクの身にとっては、特に充実した日々であったと思います。ポスドクや学生の優秀さという点からは、京都大学も負けず劣らず非常に優秀な人が多かったと思いますが、世界レベルでの情報の集まり具合はさすがハーバードであると感じました。

 その後、テキサス大学そして日本に帰国して振り返って感じることの一つは、やはり研究情報環境の差です。テキサスはアメリカの中で比較的周辺だし、日本はFar Eastです。世界の中ではもちろん、アメリカの中で見ても、ボストン地区の研究情報環境は圧倒的なものがあると思います。それは間違いないことだと思いますが、ボストンを離れて研究室を主宰する立場に立って、ふと別の印象も持つようになってきました。ポスドクであった故感じなかったのかもしれないのですが、世界から常に最先端の情報が集まる環境も、考えてみればかなりのストレスフルな環境で、いかに有利とは言え、あまりにも情報の洪水に追い立てられるのではないのかと思います。

 「パラダイス鎖国」という言葉があると聞きました。日本発ということにこだわるあまり、世界の動向から離れてしまい、気づいた時には世界では通じない状態になってしまうという様なことを指すようです。逆に、ボストン地区のような世界レベルでの情報の洪水の中で研究をやっていくのも、絶対的に有利なことは間違いありませんが、研究者にとって心底から幸せなのだろうかという疑問もあります。落ち着いた環境で、ひょっとしたら世界の流行から離れているかもしれないけれども、自分の科学的興味にしたがって粛々と真理を追求していくというのもまた楽しからず也、ではないでしょうか。つまり、雑音が少ない状況で己の研究を追求しつつ、研究の発信は世界レベルで積極的に行うことができれば理想的と考えます。国際的な交流を積極的に行って「パラダイス鎖国」状態にならず、かといって研究の流行にまどわされず、じっくり自分の研究の流れを作って、専門分野に世界レベルで貢献していければと思っています。

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