篠原 美紀准教授

   

研究内容の紹介

 

I.         減数分裂期キアズマ形成における染色体上の数と配置の制御メカニズムの解明

私たちが配偶子(卵子・精子など)を作り出すとき、2倍体の細胞から半数体に減数分裂を行います。染色体を均等に分けるときには分けられる染色体は必ず物理的に接着する必要があることがわかっています。両親由来の相同染色体は体細胞においては常に空間的に離れて存在していますが、減数分裂ではその相同染色体を均等に分配する必要があります。そこで、生物の多くは自らの染色体DNAを数百箇所にわたって切断(DNA二重鎖切断)しそれを相同組換え(DNA鎖の交換)により修復するメカニズムを用いてキアズマを形成して相同染色体を接着させます。染色体の切断はプログラム細胞死であるアポトーシスの時にも見られ、細胞にとっては自殺行為でもあります。でも、DNA二重鎖切断をいれて、それを修復するという、苦肉の策とも思える方法を用いて我々は次世代に命をつないでいくのです。そのような減数分裂期のDNA二重鎖切断の修復を確実に行うための厳密な制御機構を明らかにすることを研究の目的としています。

 

研究プロジェクト

・シナプトネマ複合体の減数分裂期における機能の解明

 

・減数分裂期交叉型組換えの恒常性維持の分子メカニズムの解明

 

・減数分裂期DNA二重鎖切断修復の非対称性の分子メカニズムの解明

 

II.       体細胞分裂時におけるゲノム安定性維持機構の解明

細胞は増殖に伴って分裂ごとにゲノムDNAを正確に複製し娘細胞に分配していく必要があります。また、生命活動に起因する酸化損傷ストレス、外的環境からは紫外線や電離放射線など、ゲノム染色体は様々なDNA損傷を受ける危険にさらされています。そのため生物はDNA損傷から遺伝情報を守る、つまりゲノム安定性維持のための手段として様々なDNA損傷修復機構を備えています。しかし、傷の種類や染色体DNAの構造、細胞のおかれた状況などによってたくさんある中から的確に修復ツールを使い分けなければ正確に修復することはできません。そのシステムの破綻が細胞のがん化の原因のひとつだと考えられています。DNA二重鎖切断修復に関わり、ヒトでの高発がん性遺伝病の原因遺伝子産物とその酵母ホモログのDNA損傷修復における細胞内機能を明らかにすることで、DNA二重鎖切断修復とその制御の分子メカニズムの解明を目指しています。

 

研究プロジェクト

DNA二重鎖切断修復とDNA損傷応答の分子メカニズムの解明

 

非相同末端結合修復の制御メカニズムの解明

 

ヒト細胞におけるDNA二重鎖切断修復過程を解析するための検出系の確立