<受賞者> 中川 敦史(蛋白質研究所プロテオミクス総合研究センター/教授)
<受賞研究名> 「放射光を利用した生体超分子構造解析法の開発とその応用」
<受賞理由>Photon Factory およびSPring-8 におけるタンパク質をはじめとする生体高分子の構造解析のための放射光ビームライン(BL6A とBL44XU) の開発や,異常分散法および非結晶学的対称性平均化法を利用した位相決定法などのタンパク質結晶学の方法論の開発を進めてきた.これを利用して数多くのタンパク質・生体超分子複合体のX 線結晶構造解析に成功した.これは中川教授のタンパク質結晶学とその周辺の科学・技術への深い知識と経験に負うところが大きく,国内外から高く評価されている.特に,解析が困難な生体超分子複合体であるイネ萎縮ウイルスと超好熱菌由来ウイルス様粒子の構造研究は注目されている.分子量7500 万の巨大な2 重殻RNA ウイルスであるイネ萎縮ウイルスについては, BL6A を利用して3.5 オングストローム 分解能の高精度データを収集,側鎖構造も含めた原子構造の決定に成功し,ウイルス粒子形成機構やRNA を宿主に送り込む機構を解明した.一方,高い熱安定性を有する超好熱菌由来ウイルス様粒子を単離・同定し,さらに2 軸が600 オングストロームを越える大きな格子定数をもっ結晶にもかかわらず, BL44XU を利用して3.6オングストローム分解能のデータを収集し原子レベルの詳細な立体構造を決定することによって,本粒子の進化の仕組みや熱安定化機構を明らかにした.中川教授によるこれら生体超分子複合体の構造解析法の開発とそれを利用した構造研究は,タンパク質結晶学の新天地を開拓したものであり,日本結晶学会学術賞に相応しいものである.