最新研究成果

Crystal structure of α5β1 integrin ectodomain: Atomic details of the fibronectin receptor

2012年3月27日

Crystal structure of α5β1 integrin ectodomain: Atomic details of the fibronectin receptor

(フィブロネクチン受容体α5β1インテグリンの結晶構造)

 

Masamichi Nagae, Suyong Re, Emiko Mihara, Terukazu Nogi, Yuji Sugita, and Junichi Takagi

 

DOI: 10.1083/jcb.201111077

http://jcb.rupress.org/content/early/2012/03/21/jcb.201111077.abstract

 

大阪大学蛋白質研究所、理化学研究所、および横浜市立大学の共同研究チームは、X線結晶構造解析をとおして、多細胞生物の主要な接着受容体であるα5β1インテグリンが細胞外マトリックス蛋白質フィブロネクチンを認識するメカニズムを解明しました。なお、本研究の成果は、米国雑誌「Journal of Cell Biology」のオンライン版に326日付けで掲載されました。

 

【研究の背景および成果】

 高等生物の細胞接着において主要な役割を果たすインテグリンは、αβサブユニットのヘテロ二量体であり、ヒトでは24種類知られています。そのなかでもα5β1インテグリンは、Arg-Gly-Asp(RGD)配列を認識するフィブロネクチン受容体として最初に同定され、ほ乳類の発生に必須であるにもかかわらず、これまでその原子分解能の構造情報は得られていませんでした。多くの糖鎖を含み、ドメイン間の可動性の高さのためにこれまで結晶化が困難であったα5β1インテグリンについて、我々はCHOlec細胞を用いた発現とアロステリック阻害抗体SG/19との複合体化を通して、そのリガンド結合領域の構造決定に成功しました。

 決定された構造からは、SG/19β1サブユニットの可動性の高い2つのドメインの間の角度をほぼ直角に固定することでインテグリンの活性を阻害しているという阻害メカニズムが明らかになりました。しかもこの「阻害された」状態のインテグリンの結晶に、結合リガンドのミメティックであるRGDペプチド溶液をソーキングすると、驚くべきことに複合体が形成し、その構造解析にも成功しました。リガンド結合前と後の2つの構造を比べることにより、なぜインテグリンが二価金属イオン依存的な細胞接着を仲立ちするのか、なぜCa2+は高濃度において細胞接着にむしろ阻害的に働くのか、などの理由が明らかになりました。またα5β1インテグリンのリガンド結合部位付近には多くの糖鎖が存在し、巨大なマトリックス成分である生理的リガンドがインテグリンにアプローチする際に、受容体上の糖鎖が正しいドッキングを誘導している可能性が示唆されました。ほ乳類細胞における最も基本的な接着装置の原子構造の解明によって、発生、増殖、分化、における接着シグナルの分子論的理解がさらに進むことが期待されます。


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図.α5β1インテグリンの結晶構造(部分)

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