最新研究成果

Structure of the connexin 26 gap junction channel at 3.5 Å resolution

2009年4月 3日

Shoji Maeda, So Nakagawa, Michihiro Suga, Eiki Yamashita,

Atsunori Oshima, Yoshinori Fujiyoshi & Tomitake Tsukihara

 

Nature 458, 597-602 (2009)

 

http://www.nature.com/nature/journal/v458/n7238/full/nature07869.html http://www.nature.com/nature/journal/v458/n7238/abs/nature07869_ja.htm

 

[ヒト由来ギャップ結合チャネルの立体構造を決定]

 

大阪大学蛋白質研究所と兵庫県立大学生命科学研究科ピコバイオロジー研究所の研究グループは、SPring-8生体超分子構造解析ビームラインBL44XUを用いて、世界で初めてヒト由来ギャップ結合チャネルの立体構造を解明することに成功しました。なお、本研究の成果は、42日発行の英国雑誌「Nature」に掲載されました。

 

[研究の背景及び成果]

 高等な生物の個体を構成する器官は多数の細胞が集まってできており、それぞれの器官では隣あう細胞が緊密に連携を取りながら活動しています。たとえば、心臓の拍動はこれを形成する心筋細胞の活動がそろってはじめて行われますし、内耳等の器官においても、それを構成する同種あるいは異種の細胞はその活動を協調させることによって正常にはたらきます。こうした細胞間の連携・協調に深く関与しているのがギャップ結合と呼ばれる特殊な膜領域であり、そこには数多くのギャップ結合チャネルが集合しています。

その発見からすでに数十年が経過しているにも関わらず、ギャップ結合チャネルの詳細な構造はいまだ明らかにされていませんでした。研究グループはこのチャネルの構造を大型放射光施設SPring-8の生体超分子複合体構造解析ビームラインBL44XUを利用したX線結晶構造解析法によって決定しました。

 構造決定されたギャップ結合チャネルは2つの隣接する細胞膜を貫いた構造を保っており、その全体構造は和楽器の鼓に似た形をしていました(図1)。分子の長軸に沿って真ん中に最小径約1.4nmの長い空洞がありました。この空洞内を小さな分子やイオンが透過できるようになっています。空洞に面したアミノ酸残基とその位置が特定できたことで、チャネルの透過性に関する研究・考察が飛躍的に進むものと期待されます(図2)。

今回、構造決定したのはチャネルが開いた時の構造です。平成19年に京都大学の研究グループが低分解能の電子線結晶構造解析によりチャネルが閉じた状態の構造を報告しています。閉じた状態ではチャネルの孔の上部に大きな構造体が見られ、これが物理的にチャネルをブロックしているように見えます。一方、今回解かれた開いた状態ではチャネル孔の上部に短い6つのαヘリックスからなる漏斗状の構造が確認され、チャネルの透過通路にはこれをふさぐようなものは見られませんでした(図3)。これら2つの構造をあわせて考察することでギャップ結合チャネルの開閉機構にはこの漏斗状の構造が大きく関与していることが強く示唆されました。

ギャップ結合チャネルを構成するコネキシンという蛋白質はこれまでに人間で20種類以上が見つかっており、どれも類似した構造を持っていると考えられています。また、その変異体の多くは難聴や不整脈等の病気の原因となっていることがよく知られています。今回決定した原子構造から、それらの変異体がチャネルの構造や機能に及ぼす影響が明らかになり、ギャップ結合チャネルの遺伝的変異と病気との関係をその立体構造に基づいて解明することができました。今後、病気治療の戦略の確立に役立てられることが期待されます。

図1,2,3.pdf

記事掲載新聞: 神戸新聞2009年4月2日朝刊、読売新聞(大阪)2009年4月2日朝刊

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