最新研究成果

X-ray crystal structure of the light-independent protochlorophyllide reductase.

2010年4月19日

Norifumi Muraki, Jiro Nomata, Kozue Ebata, Tadashi Mizoguchi, Tomoo Shiba, Hitoshi Tamiaki, Genji Kurisu & Yuichi Fujita

Nature (2010) advanced online publication

http://www.nature.com/nature/journal/vaop/ncurrent/full/nature08950.html

 

 

大阪大学蛋白質研究所と名古屋大学大学院生命農学研究科の研究グループは、立命館大学と共同で、世界で初めて植物や藻類の中で葉緑素が緑色になる反応の仕組みを解明することに成功しました。 なお、本研究の成果は、419日に英国雑誌「Nature」にweb先行掲載されました。

 

[研究の背景及び成果]

 光合成は、葉緑素という緑の色素によって光が吸収されることによって始まります。光合成によって吸収された太陽エネルギーによって地球上のほぼすべての生命が支えられているので、葉緑素はまさに生命を支える分子です。ところが、葉緑素はたいへん複雑な化学構造をしており、植物や藻類がどのように葉緑素をつくっているのか、容易には分かりませんでした。この度、大阪大学蛋白質研究所の村木則文特別研究員と栗栖源嗣教授の研究グループは、名古屋大学大学院生命農学研究科の野亦次郎研究員と藤田祐一准教授の研究グループ、立命館大学の民秋均教授・溝口正准教授の研究グループと共同で、葉緑素が作られる最終段階、葉緑素が緑色になるための反応の仕組みを明らかにしました。なお、X線結晶構造解析データは、高エネルギー加速器研究機構フォトンファクトリーで収集しました。この研究成果は、 Nature誌の発行に先立ち4月18日付け(英国時間)でオンライン版に先行掲載されました。

 ダイズを暗いところで芽生えさせると緑にならないで黄色い"もやし"になってしまいます。これはダイズなどの植物では、緑色のもとになる葉緑素を作るための最終段階ではたらく酵素が光を使ってはたらくためです。これに対して、クロマツやドイツトウヒなどの裸子植物の芽生えは暗いところでも葉緑素を作り緑色になることができます。また、多くの藻類やラン藻、光合成細菌も暗所でも緑になる能力をもっています。植物の種類によって芽生えが緑化する能力に違いがあることは、一世紀以上前にドイツの植物生理学者によって報告されていましたが、それがどのような仕組みの違いによるのか長い間分かりませんでした。90年代になり、ようやくこの違いのもとになる遺伝子が発見され、一つの酵素、光非依存型(暗所作動型)プロトクロロフィリド還元酵素(DPORと略します)のはたらきがその仕組みのもとになっているところまでは分かりましたが、具体的な仕組みはまったく不明でした。

 今回、私たちの研究グループは、植物のDPORのモデルとして光合成細菌のDPORの立体構造を世界に先駆けて明らかにしました(図1)。その結果、DPORは、窒素固定酵素ニトロゲナーゼとたいへんよく似た構造をしていることが分かりました。その類似性は全体の構造だけでなく、反応に関わる金属クラスターの空間的な位置関係もよく一致していることが分かりました。このことは、窒素分子の三重結合の開裂(窒素固定反応)とポルフィリン環の二重結合の還元(葉緑素の合成)という一見大きく異なる反応が同じような仕組みによってなされていることを意味しています。また、DPORの構造から、新規な金属クラスターが反応に関与していること、酵素に結合したプロトクロロフィリド分子自身が還元反応のプロトン供与に関わるというユニークな反応の仕組みを明らかにすることができました

 

Fig.1.png

                    (図1)

 DPORがニトロゲナーゼとたいへんよく似ていることから、以下のような進化の過程を推察することができます。太古の昔、ある祖先型酵素の遺伝子が重複して、 一方はDPORになって葉緑素を作ることで光合成に関わるように進化し、もう一方はニトロゲナーゼとなって窒素固定に関わるように進化してきたというシナリオです。このように本研究は、生物進化に対する研究にも発展していくものとなっています。

 

記事掲載新聞: 日本経済新聞2010419日朝刊

 

 

 

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