生命の神秘を解き明かす自然科学の重要な研究対象の一つが、蛋白質の構造や機能であると言っても過言ではありません。蛋白質研究所は、蛋白質の基礎研究を通じて生命活動の原理を明らかにすることを使命として、1958年に理学部と医学部が母体となって創設されました。化学、物理学、生物学、医学の研究者が集まり、学際的な場で斬新なアイデアを競い合う素地がはじめからありました。それ以来今日まで、それぞれの時代の蛋白質を対象とした先端的研究課題を追求する優れた研究者集団であり続けました。これは、諸先輩が各人の研究活動に腐心して成果を上げて来たことと共に、研究所組織の改革・拡充と研究環境の充実にも不断の努力を払ってきたことによるものです。創設後50年余を経た今、4研究部門12研究室、附属プロテオミクス総合研究センター6研究系、寄附研究部門1研究室を擁する規模に成長しています。国際的には、蛋白質立体構造データバンク(wwPDB)の世界3拠点の一つとしてアジア・オセアニア地区のデータ登録や運営を担当していますし、世界の生体系NMRデータバンク(BMRB)の拠点としても活動しています。まさに総合的な蛋白質研究のメッカとして国内外から広く認められていると自負しております。また、全国から多くの所外研究者が蛋白質研究所を訪れ、研究所の施設・装置や研究のノウハウを共用して研究を行うことができる全国共同利用研究所としても、創設当時から活発に活動してきました。この共同利用制度は日本全体の観点から改革され、2010年4月から蛋白質研究共同利用・共同研究拠点として、装いを新たにして蛋白質研究のコミュニティーに一層貢献できる体制と仕組みを作り上げました。
私たちはもちろん大阪大学の一員です。研究所に籍を置く40数名の教員が、研究所の伝統を背景にした優れたリソースを活用して、大学教育に積極的に参画しています。学部と大学院を合わせて常時100名前後の学生が研究所に配属されています。高い志を持った50名程度の博士研究者が日夜研究に精を出しています。2008年度後半からは生命科学研究独立アプレンティスプログラムによる常勤の特任准教授が主宰する3研究グループが独自に活動しており、この新しい制度は、実践的な人材育成のモデルとして期待されております。
蛋白質科学の世界には尽きることのない研究テーマが存在し、それを達成する研究そのものには国境や国籍はありません。所内では国際的な交流が日常的に行われ、学生も研究者もグローバルな枠組みの中で考え行動することが当たり前になっています。蛋白質研究所に50年間培ってきたこのようなサイエンスの土壌が備わっているからこそ、真理探究の野望を持った若い人々が集まり、切磋琢磨してすくすく育ち大きな花や果実を結ぶことができるものと確信しています。この地力を維持・増強するためには、幅広い世代にまたがる現在の構成員が先鋭的な研究を行い、研究所として優れた教育研究の場であり続ける必要があります。全員の力を合わせてこの土壌の肥沃度を高める努力を、一歩も二歩も時代の先を見据えながら、着実に積み重ねていくつもりでおります。