構造プロテオミクス研究系

Laboratory of Structural Proteomics

 


蛋白質の立体構造を核磁気共鳴装置(NMR)を用いて決定しています。この方法では、結晶を作成する必要がなく、溶液という自然に近い状態を対象とします。したがって、分子の一部が構造を形成していないような場合においては、結晶の形成はたいへん困難であるが、NMRを使用することによって解析が可能です。さらに、NMR は、蛋白質のどの領域が動いているかなどの運動性の解析にも適しています。これらの解析のための方法論はまだ開発途上にあり、有用な方法論の研究も行っています。

This group mainly determines the three-dimensional structures of proteins using X-ray crystallography and nuclear magnetic resonance spectroscopy (NMR). The method targets solution states of samples, which are more similar to natural conditions than crystal states. Therefore, NMR allows for the analyses of proteins containing flexible regions, for which crystallization is generally difficult. NMR suits also for analyses of flexibility, providing information as to which parts of proteins fluctuate. Furthermore, developments of NMR methodologies to facilitate the above studies are also important tasks.

Current Research Programs

1)  Analyses of structures and dynamics of proteins.

2)  Development of related NMR methodology.

Fig.  A 1H-15N heteronuclear single quantum correlation (HSQC) spectrum of a protein. Each peak represents the amide group of an amide acid. The wide distribution of the peaks indicates a proper folding of the protein.

 

この研究系では,蛋白質,核酸,脂質などの生体高分子をおもにX 線結晶構造解析と核磁気共鳴(NMR)という二つの方法により研究しています.

 

1.核磁気共鳴法

NMR は,蛋白質の立体構造やダイナミックスを原子レベルで解析することのできる,非常に有用な手段です.ここでは,蛋白質の立体構造の決定のほか,ダイナミックスの解析,および,それらに応用するための方法論の開発なども行っています.

 

2.蛋白質の立体構造の決定

蛋白質の機能を立体構造の観点から説明することがますます重要になってきています.立体構造を原子座標レベルで決定するには、少なくとも3個の方法 (X線結晶構造解析、電子顕微鏡、NMR) が知られています。NMR は,生体高分子を自然により近い溶液という状態で解析できるという点で特徴的です.そのため,一般的には結晶化が困難である柔軟な領域を多く含んだような蛋白質でも解析することができます.分子量 30kDa 以下の小さめの蛋白質の立体構造をNMRで決定することは,もはやプロトコール化されたと一般的には考えられていますが,実際には,大きめ(分子量 40kDa 以上)の柔軟性に富んだ蛋白質 -- 例えば,マルチドメイン蛋白質など -- を解析する場合には,依然多くの問題を解決しなければなりません.

 

3.蛋白質の運動性の解析

NMR は,柔軟性,つまり,蛋白質のどの領域が溶液中で揺らいでいるかという情報を検出するのにも適しています.結晶構造解析からは一般的に静止したより高分解能の立体構造が得られるのに対して,NMR 法では柔軟性を付加した立体構造が得られる点が,両者の違いの一つです.多くの生体機能が蛋白質の動きに関連しています.特に,マイクロ秒からミリ秒にいたる遅い動きが重要です.かつては,ピコ秒からナノ秒という非常に速い運動性が NMR でおもに解析されてきました.したがって,遅い動きという情報を得ることにより,蛋白質の新しい特徴,また,折りたたみの機構,蛋白質どうしの相互作用などが明らかになることが期待されます.

 

4.NMR 方法論の開発

上記の研究を遂行するための方法論をさらに開発することも重要な仕事です.例えば,分子量 40kDa 以上のより大きな蛋白質の立体構造の決定法や遅い運動性の検出法などを開発していく必要があります.