Research

新規タンパク質のゼロからのデザイン

タンパク質分子は、20種類のアミノ酸残基が一次元的につながった鎖状の高分子で、そのアミノ酸配列に従って固有の3次元立体構造へと折りたたみ、折りたたんだ3次構造をもとに機能を発現しています。タンパク質のアミノ酸配列パターンの総数は、アミノ酸残基数をNとすると20^N通りの膨大な数存在し(100残基のタンパク質だと、およそ10^130通り)、この広大なアミノ酸配列空間の中には、生物が進化の過程で生み出したタンパク質以外に、医療、産業、細胞の制御設計に役立つ新規タンパク質が多く存在する(はずだ)と考えられています。私達は計算機を用いて自然界のタンパク質データを解析することや、分子シミュレーションを実施すること、さらには生化学実験を行うことで、タンパク質を完全にゼロからデザインする手法を開発し、この広大なタンパク質のアミノ酸配列空間を探索することで、望みのタンパク質を創り出すことを目指しています。

これまでに私達は、アミノ酸配列の詳細というよりも2次構造やループの長さといった主鎖構造に着目することで、様々な形状のタンパク質をデザインするためのルールを発見し、これらを用いることで様々な形状のタンパク質構造を原子レベルの精度でデザインすることに成功してきました。興味深いことに、これらタンパク質は変性温度が100℃以上の非常に安定な構造を形成していました。今後は、タンパク質デザイン手法をさらに発展させることで、広大なアミノ酸配列空間の中から、自然界のタンパク質とは全く異なる形状を持ったタンパク質を創出することや、望みの機能を持ったタンパク質を創出することに挑戦します。

自然界のタンパク質の改造

タンパク質をゼロからデザインする過程で開発したタンパク質デザイン技術を用いることで、自然が生み出したタンパク質を大きく改造し、例えばこれらタンパク質の安定性を向上させることや、新規機能を付与することにも挑戦しています。これまでにポリエチレンテレフタレート分解酵素を耐熱化することや、ATPを用いて機能する回転型分子モーターV1-ATPaseに新規アロステリック部位を付与することに成功しています。