5) べん毛モーター蛋白質複合体の構造生物学研究

細菌の運動器官であるべん毛モーターは、30種類以上のタンパク質から構成される超分子複合体である。各タンパク質が適切な順番で複合体に組み込まれることによって、回転するモーターとして機能するようになる。モーターは、膜内外に形成される電気化学ポテンシャルを運動エネルギーに変化することにより、トルクを形成する。このエネルギー変換は、モーターを構成するタンパク質複合体の中で、イオンチャネルとして働く「固定子」(Stator)と、自身が回転する「回転子」(Rotor)が適切に相互作用することにより生じると考えられている。我々は、核磁気共鳴分光法とクライオ電子顕微鏡単粒子解析法を用いて、べん毛モーターが組み上がる分子機構とべん毛モーターで生じるエネルギー変換を解明することで、超分子複合体のもつ特性と機能を明らかにすることを目的としている。

　　　　　　
海洋性ビブリオ菌のべん毛モーターの模式図(下図）。タンパク質複合体からなるLPリング、Tリング、Hリング、MSリング、Cリングなどが適切な順番で組み上がることによって、べん毛は運動器官として機能できる。2種類の膜タンパク質PomA,PomBからなる固定子はNa+チャネルとして働く。C-ring中のFliGが固定子と相互作用することでべん毛の回転力を形成する。IM：内膜、PG：ペプチドグリカン層、OM：外膜

Integrated structural study for bacterial flagellar motor machinery

Bacterial flagellar motor is a molecular nano-machine, which is composed of more than 30 proteins. The flagellum functions as a motor to properly assemble. The motor converts the electrochemical gradient across the cell membrane into torque to interact with a rotor and dozen of the stators, which is ion channel. One of our research purpose is to clarify the molecular dynamics of the energy conversion and flagellar assemble using NMR and CRYO-EM method.

関連論文：
Nishikino, … Miyanoiri et al., Sci. Rep. (2018) [https://doi.org/10.1038/s41598-018-35902-6]
Miyanoiri et al., Structure (2017) [https://doi.org/10.1016/j.str.2017.08.010]