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解析法の開発

自由電子レーザーによる最先端構造解析法の開発

 創薬ターゲットとなる蛋白質の構造は、新薬の探索や最適化に重要な情報です。しかし、創薬ターゲットとして重要な膜蛋白質などの構造解析は、現時点では非常に難しく、時間を要することが知られています。

 2012年6月より、文部科学省のX線自由電子レーザー重点戦略研究課題「創薬ターゲット蛋白質の迅速構造解析法の開発」(研究代表者:理化学研究所 岩田想)がスタートしました。“SACLA”のビームラインや利用システムについて構想、実現、運用を一貫して手がけてきたビームライングループとコラボレーションし、構造生物学などの研究者が“SACLA”を容易に活用できるような技術開発を行っています。創薬ターゲットである蛋白質を迅速かつ高分解能で構造決定するために新たな技術開発を目指しています。
SACLA-SFXプロジェクト:「創薬ターゲット蛋白質の迅速構造解析法の開発」ホームページより引用)



構造解析

ヒトの体で働いている細胞接着分子の構造を明らかにする

 細胞接着は、組織や臓器の形成に必須であり、その異常はがんや他の多くの疾患の原因になっている。細胞接着を行う接着装置は、上皮細胞でよく発達しており、タイトジャンクション(TJ)とアドヘレンスジャンクション(AJ)と呼ばれている。AJではカドへリンとネクチンが、TJではクローディンがそれぞれ主要な接着分子であり、それぞれにおいて、直接接着に関与する接着分子、その分子の機能を制御する分子、接着分子によって制御されているシグナル分子など数多くのタンパク質を含み、巨大な複合体を形成し、その複合体がさらに集合して細胞膜ドメインを形成し、最終的に細胞を接着させている。本プロジェクトでは、ネクチン-アファディン系の接着装置に焦点をしぼり、これらの装置を構成する分子、その複合体の構造をX線結晶構造解析法より解析し、細胞接着装置の構造と機能を明らかにすることを目的として研究を進めている



日本人の歯周病を原因菌の蛋白質の構造から解決したい

 歯周病は生命を奪う疾患とは一般社会から認識されておらず、予防、初期治療の重要性を十分に認識されているとは言い難い。そのため、歯周病の先進的治療の開発が進展していない。しかし、歯周病は国民の大多数が罹患する口腔感染症であり、歯の喪失の主原因になるだけでなく、近年、次のようなことが明らかになった)。

①母親が歯周病に罹患していると低体重児出産や早産の頻度が増す。
②インスリン抵抗性糖尿病患者の歯周病炎症巣をなくすと、同患者の血糖値を抑えることができる。
③心臓の血管系疾患発病の危険性は、歯周病の慢性炎症巣が関わっている。すなわち、歯周病を放置すると、心筋梗塞や冠状動脈血栓症の危険が増す。
④口腔細菌は不顕性肺炎を引き起こすばかりでなく、高齢者の誤嚥性肺炎の原因となる。

 食べる行為は、単に栄養摂取の問題のみならず、生理的欲求の一つである。特に高齢者にとっては生きる上で大切な楽しみでもあり、歯を失い咀嚼行為が出来なくなると痴呆リスクが増すという二次的な影響もある。高齢者を含めた国民の生活の質を高めるために口腔の健康保持は重要である。

 歯周組織の病巣部、すなわち歯周ポケットや歯面上の成熟したプラークからは、嫌気性あるいは通性嫌気性グラム陰性桿菌やスピロヘータなどが多く分離される。とくに、Porphyromonas gingivalis、Actinobacillus actinomycetemcomitans、Bacteroides forsythus、Prevotella intermedia、Fusobacterium nucleatumなどが歯周ポケットから多数分離される。これらの細菌の中で、若年性歯周炎の原因菌としてはA.actinomycetemcomitansが注目されている。一方、成人性歯周炎の原因菌としては、P.gingivalisが重要視されている。

 我々はP.gingivalis由来の病原因子の精密な立体構造を目指している。病原因子の立体構造を基にした病原因子活性の解明および歯周病の予防や治療のためのドラッグデザインの必要性は、歯科医療においても大きな貢献が期待できると考えている.



腫瘍細胞増殖抑制効果をもつタンパク質

ガン細胞の自立的増殖の一因として転写因子の活性化がある。我々はヒラタケのリボヌクレアーゼ Po1 が、転写因子(myc 遺伝子)高発現のヒト白血病細胞 HL-60、ヒト神経芽腫細胞 IMR-32に対し増殖抑制活性を示し、アポトーシスを誘導することを明らかにした。立体構造を基盤とした合理的な設計および生化学実験により、創薬を目指している。

本研究は日本大学薬学部の小林弘子 博士との共同研究プロジェクトである。



ノルアドレナリン濃度の維持調節に働くタンパク質

血液中のノルアドレナリン(NE)の濃度の維持調節は健康にとって非常に重要である。例えば、血中NE 濃度が高い透析患者の生存年数は短く、心血管系障害により死亡する。カテコール-O-メチル転位酵素(COMT)は血中NE の代謝を担う酵素であるが、腎機能障害患者ではその活性が低下している。活性低下を改善するための創薬を目指している

本研究は日本大学薬学部の飯島洋 博士との共同研究プロジェクトである。



エビに感染するウイルスの病原因子

エビに感染するwhite-spot syndrome virusの病原因子の機能・構造解析を行っている

本研究はモンクット王トンブリー工科大学のKhunrae 博士との共同研究プロジェクトである。