X 線自由電子レーザーを利用した生体超分子複合体のイメージング法の開発

分子に X 線を照射すると,原子核に束縛された電子によって X 線が散乱されます.しかし,X 線と物質の間の相互作用は非常に小さいので,強力な放射光を利用しても1分子からの散乱を観測することはできません.そこで分子を3次元的に整列させる(すなわち結晶を作る)ことで,各分子からの散乱が干渉して得られる回折という現象を利用して X 線散乱強度を測定し,X 線結晶構造解析が行われます.これまでは,強力な放射光を利用しても結晶を利用しないとX線回折実験が行えませんでしたが,SACLA などの自由電子レーザーからの非常に強く干渉性の高いパルス X 線を使うことで,分子が破壊されるまでの短時間に1分子からの散乱を得ることができる可能性がでてきました.この手法はコヒーレント X 線回折イメージング法(Coherent X-ray Diffraction Imaging; CDI, CXDI)と呼ばれ,次世代の構造解析法として期待されています.私たちは,ウイルスなどの巨大な生体超分子複合体の結晶を必要としない構造解析法の開発 を目指した研究を進めています.

CDIの原理