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ACHIEVEMENTS

研究成果

プレスリリース

2021.01.28

過飽和によるアミロイド線維形成の抑制を解明 ―高齢者に多いアミロイド病の予防に貢献する新概念―

大阪大学国際医工情報センターの後藤祐児特任教授(元蛋白質研究所教授)、宗正智助教(蛋白質研究所)のグループは、大阪大学蛋白質研究所の大学院生の野地真広さん(令和2年3月理学研究科博士課程修了、現在、京都大学人間・環境学研究科、研究員)、神戸大学、鳥取大学、産業技術総合研究所、エトヴェシュ・ロラーンド大学(ハンガリー)、ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(イギリス)、ミュンヘン工科大学(ドイツ)、オーフス大学(デンマーク)と共同で、蛋白質が機能的な天然(ネイティブ)構造を形成するか、あるいはアミロイド病の原因となるアミロイド線維を形成するかの分かれ目が、何によって決まっているのかを蛋白質科学の手法で研究しました。

アミロイド線維は高齢化社会の深刻な問題であるアルツハイマー病やパーキンソン病など一連のアミロイド病の原因物質として世界で研究が進んでおり、特に最近はクライオ電顕や固体NMRなどの構造解析によって原子レベルの立体構造が次々と明らかになってきています。他方、アミロイド線維の形成機構の詳細は不明です。

今回、後藤特任教授らのグループは、2つの反応が過飽和によって制御されていること、そして過飽和はアミロイド線維形成を抑制していることを明らかにしました。「過飽和はアミロイド線維の形成を抑制する」という新たな視点は、アミロイド病の予防や治療の発展に貢献すると期待できます。

  • 【研究成果のポイント】
  • ・蛋白質は機能的な「天然構造」を形成する一方、アミロイド病の原因となる「アミロイド線維」を形成します。これら2つの反応の分かれ目に「過飽和」現象があり、過飽和はアミロイド線維の形成を抑制していることを明らかにしました。
  • ・さまざまなアミロイド病の原因物質であるアミロイド線維の構造に関する研究は世界的に進展しています。しかしながら、蛋白質が何故アミロイド線維を形成するのか、その根本的な機構は不明でした。
  • ・自然界の基本的な現象である過飽和がアミロイド線維の形成を抑制しているという新たな概念は、アミロイド病に対する新たな予防や治療の発展に貢献すると期待できます。

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