ラミニン511E8断片の結晶構造
細胞外マトリックスの機能解明から次世代細胞培養技術の創出へ
私たちの身体を構成する細胞は、周囲の環境から提供される情報により、その挙動が制御されています。この情報の主たる担い手は、周囲の細胞から分泌される液性因子と細胞の足場となる細胞外マトリックス (extracellular matrix: ECM) です。細胞外マトリックスは細胞表面の受容体と結合することにより、それ自身がシグナル分子として機能するだけでなく、様々な液性因子を捕捉し、その組織内での分布と活性を制御する役割も担っています。生体から細胞を取り出し、その形質を維持したまま培養するためには、培地に添加する増殖因子だけでなく、足場となる細胞外マトリックスの選択がとても重要となります。
私たちは、細胞外マトリックスの情報を解読する役割を担うインテグリン受容体に着目し、細胞外マトリックスの情報がインテグリンによってどのように識別され、その情報がどのようなシグナル伝達系を駆動して細胞の挙動を制御しているかを、分子レベルから個体レベルまで、様々な手法を用いて研究しています。そして、そこで得られた成果を活用し、さまざまな幹細胞を安定に培養・増幅するための次世代細胞培養技術の創出を目指しています。私たちの研究室が開発したヒト多能性幹細胞用培養基材はiPS細胞を使った再生医療研究で幅広く使われています。