染色体の末端構造であるテロメアは染色体の機能の発現には重要な役割を果たしています。
テロメア長は一般にテロメア合成酵素テロメラーゼにより伸長を受け、維持されていますが、テロメラーゼが機能しない時でも細胞はテロメアを維持することができます。
例えば、ある種の癌細胞ではテロメラーゼが発現していないにも関わらず無限に増殖することができます。
このような細胞では相同組換えがテロメラーゼ不在時のテロメアの伸長を保証していると考えられています。
テロメア伸長に関わる組換えには2経路あり、そのうち一方はRecAホモログのRad51に依存していません。
つまり今まで知られていないメカニズム(RecA, Rad51に依存しない形)で相同鎖の検索や交換反応を行なっていると考えられます。パン酵母をモデル系として、このRad51に依存しないテロメアの伸長反応の分子機構の解析を行なっています。
2011年5月アーカイブ
配偶子形成に必要な減数分裂期では第1分裂の前に染色体が核内で配置を変え、動くことが知られています。
この動きは核膜とテロメアの結合や細胞骨格が大切な役割を果たすことが知られていますが、その詳細な運動の仕組みや機能はあまり分かっていません。その分子メカニズムを明らかにすることを目指しています。
減数分裂期の染色体の動き、3秒毎のスナップショットー染色体がダイナミックに動いていることが分かる。
細胞周期S期のDNA複製時の際に内的、外的な要因によってDNA複製フォークがしばしば止まり、複製フォークが崩壊することがしばしば起こります。
複製を完了するためにはこの崩壊した複製フォークを再活性化する必要があります。
大腸菌ではこの活性化に相同組換えが重要な役割を果たすことが知られていますが、真核生物では大腸菌と同じように複製フォークを組換えで再構築しているかどうかすら分かっていません。
ただ、組換えに重要な役割を果たすRad51を欠損した高等真核生物の細胞は生育できないことから、組換えが通常の細胞周期でも必須の機能を持つことは分かっています。
このように真核生物の複製時の組換えを解析するためにはそれを解析するモデル系が必要だと考えられます。
複製フォークの組換えによる再活性化を解明するために複製や組換えについての知見が豊富なパン酵母で解析するためのモデル系を作成しているところです。